先日来られた患者さんからこんな相談を受けました。
現在7歳の娘さんについて、近くの歯医者さんから「今すぐに治療を始めれば、夜寝るときに着ける装置を使って2年できれいな歯並びになる。今やらないと将来歯に器具を付けないといけない」と言われ、矯正歯科治療の開始を強く勧められたそうです。
当院の患者さんであるお母さんが「でも歯の生え変わりもあるし…」と答えを迷っていたところ、「お母さんの時代からずいぶん変わったんです!」と言われたとのこと。
そんなうまい話があるのかな~とにわかに信じがたくて、今回の相談に至ったようです。
最近は予防意識の高まりで、子どもの虫歯も少なくなり、また学校検診でも不正咬合について以前より詳しくチェックされるようになったこともあって、お子さんの歯並びやかみ合わせについて気になさる親御さんも増えてきました。
ご自分が歯や健康について苦労した方は特に、お子さんの歯に対して早くから意識されるようにも思います。
子どもの矯正歯科治療の開始時期にはいろんな考えや意見があると思いますが、私自身は矯正歯科治療は無理矢理始めさせられるものではないと思っています。
子どもの矯正歯科治療は多くの場合、早く始めても早く終わるとは限りません。
子どもの歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)の生え変わりはある程度時期が決まっていて、親知らず以外の永久歯が全て生えそろうのは中学生くらいです。
歯並びやかみ合わせは、全ての永久歯がしっかり並んで、それぞれの歯がしっかりかみ合ってこそ健康的に長持ちするので、そこまではしっかり治療や管理をしていくのが矯正歯科の役目です。
したがって、早く治療を開始してもその子どもさんの成長が止まってかみ合わせが安定していることを確認するまでは治療や管理が続くことになります。
もちろん症状や患者さんの骨格パターンによっては、早く治療を開始したほうがいい場合も少なからずありますが、治療を無駄に長期化させないためには専門的な検査や診断に基づいた治療を行う必要があります。
また、矯正歯科では患者さんの成長に合わせて、初診で矯正相談に来られてもその患者さんの最も効果の出やすい最適な時期まで待つこともあるくらいです。
「今すぐ始めないと…」と言われたことで、子どもさんの将来の歯並びに強い不安を抱えてしまっている親御さんもいらっしゃるようで、そんな話を聞くたびにちょっと胸が痛みます。
ただし、お子さんの歯並びやかみ合わせについては親御さんはなかなか気付きにくいですし、治療の開始時期についてはなかなか判断が難しいものです。
気になったり指摘を受けたりした場合は、矯正歯科への早めの受診と、治療開始時期は矯正歯科医に見極めてもらうことをお勧めします。
クリニックでママが治療を受けている間、おりこうさんに待っている子どもさんたち。
この子たちが成長していくのも楽しみです♪